樋口元裁判長から伊方原発判決についてのメール

樋口元裁判長から伊方原発判決についてのメール

---背戸柳勝也 <setoyana@gmail.com>


背戸柳です。

「8月に原発ゼロへのカウントダウンinかわさき」実行委員会で主催した元福井地裁裁判長の樋口英明氏から、先日、以下のメールをいただきました。

2020年と2017年に伊方原発の運転差し止めの仮処分を出した広島高裁の判決を覆す判決を出した広島地裁を批判する内容です。

樋口氏は退官後も、原発関連の訴訟には関心を抱き続け、各地で講演も続け、今年、「私が原発を止めた理由(旬報社刊)」という本も出版されています。

また、この広島地裁の判決を承服できず、何らかの発言、行動も起こされるようです。

「お仲間にも拡散してください」とのご希望もあり、以下転送いたします。

今回の衆議院選で、またも自民党が単独過半数を占めてしまい、またもや脱原発が遠のいた感があるだけに、諦めない市民運動と司法の力に期待し、脱原発をめざすほかないように思えます。

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背戸柳様

私が実質的に関与した初めての原発差止め仮処分は、11月4日広島地裁で却下されました。

全ての争点について四国電力と主張を闘わせた結果、四国電力は最後の方は反論できずに

黙ってしまいました(四国電力は負けを覚悟したはずです)。

そこで、私はよほど悪質な裁判官でない限り勝つだろうと思っていたのですが、残念ながらこのような結果となりました。

四国電力は「マグニチュード9の南海トラフ地震が伊方原発直下で起きたとしても、伊方原発の敷地には181ガルしか到来しない」という非常識な地震動算定を行っていました。

マグニチュード9の東北地方太平洋沖地震では震央(震源の真上の地表面または海面をいいます)から180キロメートル離れた福島第一原発の解放基盤表面(固い岩盤)において675ガルの地震動が到来しました。

四国電力は、マグニチュード9の南海トラフ地震が伊方原発直下で起きても伊方原発敷地の解放基盤表面(固い岩盤)には181ガル(震度5弱相当)しか到来しないとしました。

ちなみに、震度5弱とは、棚から物が落ちることがある、

希に窓ガラスが割れて落ちることがあるという程度の揺れです。

なお、181ガルに合理性がない場合には基準地震動(650ガル)の合理性が

失われることについては四国電力も争っていませんでした

広島地裁は、住民側の立証責任の軽減を図った伊方最高裁判決を適用せず、

具体的危険性の立証責任は全て住民側にあるとしました。

南海トラフ地震181ガル問題についても、震源特性・伝播特性・増幅特性等に関する

修正補正を加えた後でなければ、伊方原発の岩盤での181ガルと福島第一原発の岩盤での

675ガルとを比較して一概に181ガルを不合理だとすることはできないとしました。

そして住民側がその補正をせずに181ガルと675ガルを比べているので具体的危険性の立証は

不十分だとしたのです。

しかしこのようなことは四国電力さえも主張していなかったので実に奇妙な判断といえます。

住民側は「震源特性・伝播特性・増幅特性等は正確に見極めることはできないので、

そもそも最大地震動(基準地震動)は予知予測できない」と主張していたのです。

そのような主張をしていた住民側に裁判所は無理難題を押しつけたのです。

更に、差止めが認められるためには、住民側において、近々基準地震動650ガルを超える地震が

発生することを立証しなければならないとしました。

およそ地震学者にもできない無理難題を住民側に課しました。

以上が今回の決定のあらましです。

とても承服できる内容ではないので、広島高等裁判所に是正を求めることにしました。

後輩裁判官達が裁判官としての矜持も人としての最低限の公平感も持ち合わせていないのを

見るのはたいへんつらいのですが、三権の中で頼ることができるのは裁判所しかありません。

希望を失わずに頑張っていきたいと思っております。

引き続き見守ってくださいますようよろしくお願い致します。

                 樋口英明

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